2024年度 研修報告 オンライン研修「多様性が活きることばの教育」・実践交流会「多様性が活きることばの教育実践」(対面)
2024年度 オンライン研修 「多様性が活きることばの教育」
研修A 文化間移動する高校生の日本語指導
研修B 幼・小・中・高を結ぶことばの学び
実践交流会「多様性が活きることばの教育実践」
主催:東京学芸大学 先端教育人材育成推進機構・外国人児童生徒教育推進ユニット
私たち教育者は、日本で暮らす多様な言語・文化を背景にもつ子どもたちが、周囲と心を通わせ、考えを交わらせて関係を築き、興味・関心を探究し自己の実現のために未来を切り拓いていく力を育もうと挑戦しています。子どもたちに学びの連続性を保障するために、その多様性やそれまでの経験、培ってきた力が活きることばの学習の場をデザインし、提供することが期待されます。子どもたちの年齢的な違いに着目して、二つのオンラインによる研修を実施します。
研修Aが、社会との接点に質的に変化が起きる高校生を中心とした日本語指導に関する研修です。そして、研修Bが、年齢的な発達・校種による教育内容の違いを超えて学びに連続性をもたせるための授業づくりの研修です。学校で、地域で、言語・文化の多様性を活かしたいと子どもたちの教育に奮闘する皆様、是非、一緒に学び、検討しましょう。
二つの研修を、同日に実施しますが、受講者像も内容も異なる別の研修です。研修Aは、高校生対象の日本語の指導・学習支援に携わっていらっしゃる方、研修Bは、子どもたちの日本語指導・支援の経験がまだ短く、明日からの授業を検討したい方を主な対象としています。
研修A
| 第1回 6月7日 | 進路選択で重視される「日本語の力」 |
| 第2回 7月7日 | キャリア開拓のための日本語指導 |
| 第3回 8月21日 | 社会参加のための力を育む日本語指導 |
研修B
| 第1回 6月7日 |
来日間もない子どもの受入れと日本語指導の工夫 |
| 第2回 7月7日 | おしゃべりができる子どもへの学習参加支援 |
| 第3回 8月22日 | 自己表現を支えることばを生む環境作り~社会とわたしを繋ぐ~ |
実践交流会「多様性が活きることばの教育実践」
| 第1回 8月17日(東京) |
| 第2回 9月14日(大阪) |
| 第3回 11月9日(福岡) |
2024年度 オンライン研修 「多様性が活きることばの教育」
本ユニットが実施した、オンライン研修の報告をします。アンケート結果、寄せられた参加者の声、また、企画・実施者の振り返りを掲載します。研修A「文化間移動する高校生の日本語指導」、研修B「幼小中高を結ぶことばの学び」で、それぞれ3回ずつ実施した研修について、全体の趣旨、ねらいとする資質能力、研修各回の報告を掲載します。また、それぞれの研修の講義・報告の資料も公開しています。ご活用ください。
研修A 文化間移動する高校生の日本語指導
<趣旨>
「特別の教育課程」による日本語指導の制度についての理解を深めると共に、その活用によって、外国人生徒等が社会に参画し、キャリアを開拓していくためのことばの力の教育として、日本語指導をどのような内容で構成し、どのように計画して実施していくかを学びます。言語的文化的な多様性やそれまでに培ってきた力や経験を、生徒がいかに発揮しながら日本語を学び、教科等の学習に向きあい、進路を主体的に選択し、社会において自己実現のためのことばの力を育むための考え方、ことばと内容との結び付け方などを検討します。
<ねらいとする資質・能力>
文部科学省 「外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・研修モデルプログラム開発事業」の「豆の木モデル」(日本語教育学会2019)にもとづき、下表の資質・能力の向上を目指して、各回のテーマ及び内容を設定し、目標を具体化して、研修を実施する。
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回 |
実施日 |
テーマ |
資質・能力 |
具体的目標 |
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1 |
2024年 6月9日 |
進路選択で重視される「日本語の力」―日本語能力試験へのチャレンジ― |
・捉える力(社会的背景の理解) ・育む力(日本語・教科 の力の育成) |
ク 子どもがどのような自己像を描き、どのように社会参加し自己実現ができるかを、社会の変化と共に展望することができる。 シ 子どものニーズ、能力、学習経験に応じて個別の指導計画を作成し、日本語指導等を実施し、評価を行うことができる。 |
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2 |
2024年 7月22日 |
キャリア開拓のための日本語指導 |
・育む力(日本語・教科の力の育成) ・つなぐ力(学校づくり) |
セ 学校内外の生活・学習に結び付けて、日本語や教科の指導・支援、内容(教科等)と日本語を統合した指導・支援をすることができる。 テ 外国人児童生徒等教育を学校の教育課題に位置づけ、学校全体で取り組むよう働きかけることができる。 |
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3 |
2024年 8月21日 |
社会参加のための日本語指導 |
・育む力(異文化間能力の涵養) ・変わる・変える力(多文化共生の実現) |
ツ 人権教育、持続可能な開発のための教育、市民性教育等と関連づけて、外国人児童生徒等教育を行うことができる。 ノ 外国人児童生徒等のマイノリティの立場を理解し、公正性を意識した教育・支援ができる。 |
研修A 第1回報告「進路選択で重視される「日本語の力」―日本語能力試験へのチャレンジー」
〇当日の資料(敬称略) 青字部分をクリックしてください。ダウンロードできます。
講義1 「特別の教育課程」の編成による日本語指導
―日本語能力試験(JLPT)の学習を「個別の指導計画」に位置付ける―
齋藤ひろみ(東京学芸大学)
講義2 「進路選択の幅を広げる日本語の力を育む」
―日本語能力試験(JLPT)対策を運用力向上のための学習に―
市瀬智紀(宮城教育大学)
報告 「特別の教育課程」としての日本語指導実施校より
「特別の教育課程」の日本語
高島 みゆき (東京都立砂川高等学校 定時制課程 教諭)
綾野 舞 ( 同 日本語指導支援員)
研修A 第2回報告「キャリア開拓のための日本語指導」
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講義 キャリアを開拓する日本語指
―職業的専門性に関連付けた日本語学習活動を例に―
小西円(東京学芸大学)
齋藤ひろみ(東京学芸大学)
武内博子(明治大学)
報告 「特別の教育課程」としての日本語指導実施校より
「特別の教育課程」による日本語指導実施校の報告
佐藤 創(群馬県立太田フレックス高等学校)
研修A 第3回報告「社会参加のための力を育む日本語指導」
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講義 「社会参加のためのことばの力を育む
―社会に関わり続け、問題を解決するために」
齋藤ひろみ(東京学芸大学)
事例紹介・話し合い
「荒井学園高岡向陵高等学校2023キャリアアップ・日本語の取り組みについて」
青木由香(荒井学園高岡向陵高等学校)
報告 「高等学校における帰国・外国人生徒への支援体制について」
鈴木悟・前野哲也(北海道函館工業高等学校 定時制)
研修B 「幼・小・中・高を結ぶことばの学び」
<趣旨>
日本語を学ぶ子どもたちの心身の成長発達や子どもたちを取り巻く環境をふまえながら、スムーズな学校での受け入れや日本語指導例、そして、幼・小・中・高等学校間の学びの連続性を重視した支援について、一緒に考えます。
本外国人児童生徒教育推進ユニットで作成した動画(参加者限定公開)を事前視聴と講義により基礎的な情報や知識を学び、実践例の報告・紹介を通して日本語指導や学習支援のイメージをつくり、ワークショップ型の活動を通して、明日からの指導・支援に生かせる具体的なアイディアを一緒に考えます。
なお、初めて日本語指導を担当することになった先生方や支援活動を始められた支援者の皆さんを主な参加者として内容を構成しております。
<ねらいとする資質・能力>
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回 |
実施日 |
テーマ |
資質・能力 |
具体的目標 |
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1 |
2024年 |
来日間もない子どもの受入れと日本語指導の工夫~はじめてとはじめてが出会って~ |
・捉える力(子どもの実態の把握) ・育む力(日本語・教科の力の育成/ |
ア 子どものシグナルを見逃さず、文化間移動と発達の視点をもってその 困難さを理解することができる。 イ 子どもの心理的状況を文化適応や家庭の状況に関連づけて理解することができる。 コ 第二言語習得や教育方法に関する知識を踏まえ、子どもの年齢的な発達の違いを考慮した日本語や教科の指導・支援をすることができる。 |
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2
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2024年
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おしゃべりができる子どもへの学習参加支援 |
・育む力(日本語・教科の力の育成) |
コ 第二言語習得や教育方法に関する知識を踏まえ、子どもの年齢的な発達の違いを考慮した日本語や教科の指導・支援をすることができる。 セ 学校内外の生活・学習に結び付けて、日本語や教科の指導・支援、内容(教科等)と日本語を統合した指導・支援をすることができる。 ス 子どもの日本語の力を考慮して教材等を選んだり作成したりしてリソースを準備し、学習参加を促すことができる。 |
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3 |
2024年 |
自己表現を支えることばを生む環境作り (仮) |
・育む力(日本語・教科の力の育成/異文化間能力の涵養) |
セ 学校内外の生活・学習に結び付けて、日本語や教科の指導・支援、内容 (教科等)と日本語を統合した指導・支援をすることができる。 タ 子どもの母語、母文化、アイデンティティを尊重し、学級・学校・地域における社会参加を促すことができる。 |
研修B 第1回報告「来日間もない子どもの受入れと日本語指導の工夫~はじめてとはじめてが出会って~」
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趣旨説明・講義
「来日直後の子どもの受入れにおける配慮および日本語指導の工夫」
谷 啓子(東京学芸大学)
「幼小の学びの連続性について~子どもの学びの特性に着目して~」
原 瑞穂(東京学芸大学)
実践事例の報告「日本語初期段階の学習支援」
報告1 東京都新宿立大久保小学校 教諭 柏木めぐみ
報告2 横浜市立潮田小学校 教諭 髙瀨 円
研修B 第2回報告「おしゃべりができる子どもへの学習参加支援~みんなの考え・わたしの考え~」
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趣旨説明・講義
「子どもが学習参加するための力を育む日本語指導の工夫」
河野俊之(横浜国立大学)
実践事例の報告「日本語初期段階の学習支援」
報告1 地球っ子クラブ2000 代表 髙栁なな枝
報告2 福生市立福生第二中学校 教諭 一瀬知未
研修B 第3回報告 「自己表現を支えることばを生む環境作り~社会とわたしを繋ぐ~」
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趣旨説明・講義
「アイデンティティから考える自己表現とことばの教育」
米本和弘 (東京学芸大学)
実践事例の報告「自己表現を支えることばを生む環境作り ~社会とわたしを繋ぐ~」
報告1 岐阜県可児市立蘇南中学校 教諭 青山岳史
報告2 別府市教育委員会日本語指導員・多文化に生きるこどもネットワーク大分 立山愛
実践交流会「多様性が活きることばの教育実践」(対面)
<趣旨>
本学外国人児童生徒教育ユニットでは、2タイプの計6回のオンライン研修に加えて、日本語教育・支援の一定の経験を有する教員・支援員・支援者の皆さんが、相互に実践を語り合い・学び合う場を設けることにしました。子どもたちも多様(言語・文化背景、来日の経緯や滞日期間、ことばの力や認知・学力の発達状態)であれば、教育・支援現場も多様(地域の多文化かの状況、組織・団体としての考え方、日本語教育・指導の仕組み、人的配置)、そして携わり者も多様(立場・教育経験・教育観・言語指導の知識・技能)です。そうした中で、様々な立場で、多くの皆さんが、子どもたちがことばを豊かに運用できる力を高めるための教育活動・支援活動に創意工夫をなさっています。この実践交流会では、そうした皆さんが、自身の実践について語り、具体的なアイディアを共有するとともに、その背後にある子ども観、学習観、言語観を交差させながら、次なる、実践を展開するための創発を得る活動をします。
<ねらいとする資質・能力※>
実践交流会でも、オンライン研修同様に、多様化する学校や社会で教育を担う者の資質・能力のねらいを設定して実施します。
各回で、活動内容には多少の違いはありますが、基本的にはどの回も、次の資質・能力を育み・高めることを目指して実施します。
※文部科学省 「外国人児童生徒等教育を担う教員の養成・研修モデルプログラム開発事業」の「豆の木モデル」(日本語教育学会2019)にもとづき、下表の資質・能力の向上を目指して、各回のテーマ及び内容を設定し、目標を具体化して、研修を実施する。
資質・能力 |
具体的な力 |
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捉える力 |
子どもの実態把握 |
ウ 子どものことばの力を、日本語と母語の両言語を視野に入れ、言語能力の多面性に留意して測定したり評価したりすることができる。
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社会的背景の理解 |
オ 外国人児童生徒等教育に関する施策や制度を、自ら情報を収集して理解することができる。
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育む力 |
日本語・教科の力の育成 |
シ 子どものニーズ、能力、学習経験に応じて個別の指導計画を作成し、日本語指導等を実施し、評価を行うことができる。
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異文化間能力の涵養 |
チ 子ども の 文化間移動の経験や言語的文化的多様性を価値付け、周囲の子どもの学びに結びつける ことができる。
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つなぐ力 |
学校づくり |
テ 外国人児童生徒等教育を学校の教育課題に位置づけ、学校全体で取り組むよう働きかけることができる。 |
地域づくり |
ヌ 子どもの学びが広がりと連続性をもったものになるように、地域の他校、あるいは保幼小中高の連携を進めることができる。
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変える/変わる力 |
多文化共生社会の実現 |
ノ 外国人児童生徒等のマイノリティの立場を理解し、公正性を意識した教育・支援できる。 |
教師としての成長 |
ホ 実践の 質 の 向上 のために、教師集団で経験を共有したり相互に研修を行ったりすることができる。 |
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第1回 実践交流会 於:東京学芸大学
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八王子市立由井第一小学校 教諭 千葉多恵子
NPO法人メタノイア コーディネータ 赤澤聡子
トムソン木下 千尋(ニューサウスウエールズ大学)
第2回 実践交流会 於:大阪府立男女共同参画・青少年センター
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〇当日の資料(敬称略)青字部分をクリックしてください。ダウンロードできます。
講演: 「私」から始まることばの教育実践〜教員のアイデンティティを考える〜
オーリ リチャ(武蔵野大学)
第3回 実践交流会 於:福岡女子大学
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